後宮小説酒見 賢一 (1989/12)
新潮社
一見すると中国の史実の中のエピソードをひとつつまんで小説にしたのかな?と思わせる本作品。ところがこれ、第一回ファンタジー大賞の大賞受賞作でジブリ制作で映画化もされたれっきとした架空の話なのである。
まるで本当に中国の宮廷絵巻を読んでいる様な巧みなリアリティと面白さに驚く。
物語は乾王朝の帝王が急死し新に後宮を作る所から始まる。(もちろん乾王朝なんて中国の歴史に存在しない)多数の宮女を民間からも募集し、主人公銀河もその一人であった。もしかした正妃になれるかもしれないという野望を持ったライバル達が待つ後宮へ入るが、同じ頃若き皇太子に代わり政権を奪取しようとする不穏な動きが内からも外からも上がっていた。
活発で無邪気な銀河をはじめ、混沌、双槐樹(コリューン)、幻影達(イリューダ)など、想像力を掻き立てる魅力的なキャラクターが多く登場する。架空の話だとわかっていても、まるで三国志のような一大叙事詩を読んでいるような気にさせる面白い小説だ。
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